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おしゃれな部屋にするための照明選びのコツ~一室多灯照明についてインテリアコーディネーターが解説~

おしゃれな部屋にするための照明選びのコツ~一室多灯照明についてインテリアコーディネーターが解説~

インテリアをおしゃれにするには、家具やカーテンと同様、照明のプランや器具選びも大切です。

どんなに高級な家具を置いていても、照明次第では安っぽく見えてしまいます。

逆に、狭い部屋でも、照明次第で広く感じさせることもできます。 

 ただ、照明の提案は、プロでも難しいと感じる人も多いです。

それにはいくつかの理由があるのですが、プロでも難しいと思うものを、一般の方が上手にするのは無理なのでは?と思われるかもしれません。

しかし、照明を変えることで、いまより豊かな暮らしができるようになります。

特に「一室多灯照明」と呼ばれる、一つの部屋に複数の照明器具を置く照明手法は、部屋の雰囲気をグッと上げることができるのですが、実際には、まだまだ一般的にはなっていません。

この記事では、照明プランのポイントを、一室多灯照明を中心に、できるだけ分かりやすく解説してみました。

一室多灯照明って、暗いのでは?掃除に手間がかかるのでは?など、よく聞かれる疑問についてもお答えしています。

ぜひ参考にしてみてください。

照明の理想は「太陽に似ている事」

人間の身体にとって、理想の照明は「太陽に似ていること」です。
どういった点で、太陽は理想の照明なのかを説明します。

色の見え方は太陽光で見たときが基準になっている

買い物に行き、買った商品(洋服など)の色が、お店で見たときと、持ち帰って自分の部屋で見たときには、
なんだか違った、という経験はないでしょうか。
更に、その洋服を着て外に出たときには、また違って見えることもありますね。
このように、色の見え方、物の見え方は、光によって違ってきます。

色は、太陽光で見たときが一番正しい見え方です。

照明器具の商品には、「Ra値(演色性)」という値を使って、太陽光で見たときに近い色で見えるか表示しているものがあります。
それくらい、照明というのは太陽に近づけることを目指していると言えます。
ちなみに、一般的な照明器具ではRa値は82~83程度、演色性の高いタイプの特別な照明器具で、Ra95程度になっています。(大光電気2023年版総合カタログ)

朝から、昼、夕方(夜)へと変化する

太陽は、朝、低いところから上り始め、昼間には高いところから地上全体を明るく照らします。そして、夕方にはオレンジ色の夕日になって、西に沈んでいきます。
実は人間の身体も、それに合わせて活発になったり、リラックスモードになったりしているのです。

昼間の太陽のような、白っぽくて明るい照明では、身体が仕事や勉強、運動をするぞ!という状態(脳の交感神経が優位)になっています。

オレンジ色の夕日が沈むころには、人間も、身体を休めて疲れを取るリラックス状態(脳の副交感神経が優位)になります。

ところが、夕方や夜になっても昼間のような明るい光を人工的に浴びていると、脳や身体が活動状態のままになります。
これによって生活リズムが乱れたり、不眠の原因になったりします。
より良い睡眠をとり、生活の質を上げるためには、朝には太陽の光を浴び、夜には照明を落とすという事がとても大切になってきます。
(お仕事などの都合で、どうしても昼夜が逆転したり、ずれたりするという方は、「人工的な照明で、身体の状態をある程度変えることもできる」という事を
覚えておいてください。)

一室多灯のメリット

ここからは一室多灯照明について説明していきます。
まずは一室多灯照明が、インテリアや人間の暮らしにとって、なぜいいのか、どういいのか、ということを
紹介します。

一室多灯照明は太陽の光を再現しやすい

太陽は、朝、低いところから上り始め、昼間には高いところから地上全体を明るく照らします。
そして、夕方にはオレンジ色の夕日になって、西に沈んでいきます。

実は、人間の身体も、その太陽の動きによって、活発になったり、リラックスモードになったりしているのです。
ですから、昼間は太陽のように白っぽい光を、真上から浴びることで、心身が活動的になりますし、
夕方以降は夕日に近いオレンジ色の電球色を、低い位置から照らすと、身体も心もリラックスできる部屋になります。
焚火を囲んで団らんしたり、キャンドルの明かりで心を落ち着けたりするようなイメージです。

一室多灯照明は、部屋の明るさを変えられたり、照明器具を色々な高さに設置できます。
室内を、太陽の変化に近い状態で照らすことができるので、人間にとって理想的な環境になります。

部屋に変化がつけられる

室内に複数の照明があると、さまざまなパターンで組み合わせて、多様な照明ができます。
一つつける、たくさんつける、AとBを付ける、AとCをつける、のように、組み合わせを変えることで、
明るさや、部屋の雰囲気を変えられるのです。

間取りも家具も変えなくても、照明だけを変えれば、一つの部屋を何通りにもに楽しめるのです。

部屋の雰囲気がよくなる

「雰囲気がいい部屋」と一言で言っても、どんな部屋をイメージするかは人によって違うかもしれません。
しかし、おおむね、「おだやかである」、「想像力をかき立てる」、「リラックス感がある」、といったことではないかと思います。
過激でとがっているというよりは、穏やかで小さな刺激がある部屋が、雰囲気がいいと感じるのではないでしょうか。

一室多灯の明かりは、明るく照らしすぎるのではなく、穏やかで、優しい明かりです。
また、それによってできる優しい影には、リラックス感や想像力をかき立てる効果があります。

部屋に奥行き感が出る

光と影の効果は、部屋の広さにも影響します。
部屋の隅を照らすことで、そこに視線が向き、奥行き感を感じます。
部屋に奥行きを与えるために必要なのは、均一に部屋を照らすのではなく、
明るいところと、影になるところがあることです。
それによって遠近感が生まれ、部屋が広く感じられます。

暮らしが豊かになる

一室多灯の明かりは、部屋の中を歩き回って、一つずつスイッチを入れる作業をしなければなりません。
これは一見、手間がかかって非効率に思えるかもしれませんが、こうして少しの手間をかけて(と言っても所要時間は1~2分くらいですよね)
明かりをともしていく行為は、とても贅沢で、心豊かなものではないでしょうか。
お気に入りのチェアに座り、ライトを灯して本を読む。
そんなゆとりのある時間を、たとえ短くても日々過ごすことこそ、人生の中で大切なことかもしれません。

場所別の心地よい照明のポイント

一室多灯照明を成功させるために、部屋の場所別に、どんな明かりをどのように設置すればよいかを
解説します。

ダイニングテーブル上にはペンダントライトを吊るす

ダイニングテーブルの上には、ペンダント照明を1~3灯吊るすのが定番です。
ペンダント照明は、部屋全体を明るくするには弱いのですが、テーブルの上を明るく照らします。
テーブルの周りは少し暗く、テーブルの上を明るくすることで、
食事が美味しそうに見えますし、人々の意識もテーブルに向けて集中しやすくなります。

電球の明るさは、テーブルの大きさにもよりますが、おおむね合計60W程度(LEDなら8W程度)です。

注意したいのが、ペンダントを吊るす高さです。
デンマークの照明ブランド「ルイスポールセン」では、テーブル面を十分に明るくするには、テーブル面から照明器具の下端までを
60㎝程度にするのがいいとしています。
国内外の照明器具を数多く取り扱う日本の照明メーカー、YAMAGIWAも、ペンダント照明はテーブル面から60㎝、高くても80㎝までと推奨しています。

しかし、低すぎてうっとうしいのでは? 立つときに頭に当たりそう、などの理由で、かなり高くしてしまう人が多いようです。
もちろん、部屋の天井高や広さ、家族の身長なども考慮しなければいけませんが、高い位置からだとテーブル面が十分明るくなりません。
「やっぱりおしゃれな照明って、暗いのね」と思われる原因はここにもあるのかもしれません。
正しい位置に吊るせば、暗すぎるという事はないはず。

更に、ペンダント照明が高すぎると、インテリア空間として見た目のバランスも美しくなく、いいかえると、ダサくなってしまいます(死語?)。
明るさの面でも、空間美の面でも、ペンダントは思い切って低めに吊るしてみてください。

ソファやラウンジチェアの周りには手元用のスタンド照明を

ソファでくつろぐ時に、何をしていることが多いですか?
本を読む、お茶を飲む、テレビを見る、おしゃべりをする…。
その行為に合わせた明かりを置きます。
手元が明るくなるよう、ソファの横に高めのフロアスタンド照明を置きましょう。
右利きの人なら、左側から光を当てます。

明るさは、お茶を飲むときは40W程度、本を読むなら60W程度。
テレビを見るならソファの手元は暗くてもかまわないので、10~20Wで十分です。
更に、ソファの前に置くセンターテーブルや、ソファ横のサイドテーブルには、小さなテーブルスタンドを置きましょう。

まったりとお酒を飲んだりして、思い切りくつろぎたい時は、床に直接置くフロアライトを使ってみましょう。
フロアライトは、水平線に沈む直前の夕日のイメージ。
明かりは、低ければ低いほどリラックス感がでます。

部屋の隅にもスタンド照明を

部屋の入り口から斜め奥の隅は、「フォーカルポイント」(一番視線が行きやすいところ)です。
ここにフロアスタンドを立てましょう。
もしここにサイドテーブルがあるならば、その上にテーブルスタンドを置いてみましょう。
部屋の奥行き感がグッと増して、部屋が広く感じられます。
電源がとれるならば、ペンダント照明を吊るすのも素敵です。

そもそも人間は、明るいところに目が行くようになっています。
ですから、部屋の手前にある灯りと、遠くの隅にある灯りを目が拾い、遠近感を感じます。
それによって部屋の奥行きが強調される、という効果もあります。

デスク廻りにはデスクライト

ワークスデスクには必ず手元を照らす照明を置きましょう。

一室多灯照明の基本は、明るいところ、暗いところをつくることですが、
デスクの上は、手元全体が明るくなるよう、光が下に出る「タスク照明」タイプのスタンドを置くことが大切です。

タスク照明とアンビエント照明を組み合わせる

さて「タスク照明って何よ?」と思われたかもしれません。
急に言ってすみません。
スタンドやペンダント照明は、光がどのように出るかによって、「タスク照明」と「アンビエント照明」、
両方を兼ね備えた「タスク&アンビエント照明」に分けられます。

光が出る方向は、主にシェードの素材や、シェードのすき間のあき具合によって決まります。

【タスク照明】
光が器具の下だけに向かって出るものです。
シェードが透けない素材でできているため、器具の上や周りには光が漏れず、下方向に集まります。
タスク照明では、器具の周りや部屋が明るくなることはありません。
手元をしっかり照らすための照明です。

【アンビエント照明】
シェードが透ける素材でできていて、器具の周りや上方向を照らす照明です。
部屋の形や近くの領域、天井を照らします。

【タスク&アンビエント照明】
手元を照らしながら、同時に上方へも光を向けて、部屋も照らすような器具の事です。
または、部屋の中にタスク照明とアンビエント照明を混在させる照明手法のことも「タスク&アンビエント照明」と呼ばれます。

タスク照明だけでは部屋があかるくなりませんし、アンビエント照明だけでは、手元の明るさが取れません。
一室多灯照明では、一つの室内に、タスク照明とアンビエント照明を両方、バランスよく混在させましょう。

さまざまな高さに明かりを置く

一室多灯照明によって、部屋の中に、さまざまな高さの照明を設置することができます。
これが、落ち着く照明にするのに効果的なのです。

室内の照明器具の高さは、
目線の高さ(140~160cm)、腰高くらい(80~100㎝)、床の上(0~30cm)といった感じで変化を付けます。
これらを組み合わせることで、バランスのいい照明環境を作ることができます。

おしゃれな照明について、よくある疑問

日本ではこれまで、部屋の明かりと言えば、天井の真ん中に丸いシーリングライトが一つ、ポンとついていて、それを付ければ部屋がまんべんなく明るくなる。
これが、長い間の主流でした。

今は、そればかりではなくなっていますが、それでもまだ、「一室多灯は素敵だけど、自宅に取り入れるのは不安だ」と感じている人も多いようです。
そこでここでは、照明の提案の際にお客様から聞かれる質問を紹介し、それにおこたえしたいと思います。

「一室多灯って暗くないですか?」

照明で部屋をおしゃれにしたい!と思っても、実際の生活にはどうなの?暗すぎるのでは?と不安に思っている方もいるでしょう。
たしかに、今までのような、天井に丸いシーリングライトがついた部屋は、均一に照らされていて明るく感じます。
それに対して、一室多灯の明かりの部屋は、陰影がつきます。確かにおしゃれだけど、実際には暮らしにくいのでは?
仕事や読書には向かないのでは?と思う方もいます。

確かに、そう思われるのも当然だと思います。
日本と欧米では住宅の広さも部屋の使い方もちがいますし、ライフスタイルも違います。
そして、眼球の色が違うので、同じ明るさの光でも、欧米人にとっては快適でも、日本人には暗く感じる、という事もありそうです。
欧米や、北欧の照明をそのまま真似しても、日本人にとっては快適にならない気がします。

これを解決するには、「日本人や日本のライフスタイルに合わせた一室多灯」が必要です。
欧米や北欧では、天井には照明を付けないことが多いのですが、日本では、天井灯や、ダウンライトも併用しての一室多灯の方が、現実的かもしれません。

ただし、このダウンライトが明るすぎると、せっかくの一室多灯の雰囲気が出ません。
ダウンライトは、必ず調光できるものにします。
ダウンライトは、壁を照らすように配置します。壁が明るいと、部屋全体が明るく見えるからです。
壁面はダウンライト、手元はスタンド、ペンダントで明るくします。
こうすることで、明るさはある程度確保しながら、一室多灯を楽しめるでしょう。

ダウンライトと、スタンドやペンダント照明はスイッチを別にして、別々にオンオフできるようにします。
更に、ダウンライト同士も、スイッチをいくつかに分け、必要なところだけを点灯できるようにしておきます。
こうすると、部屋の雰囲気を変えて楽しめます。

時にはダウンライトをすべて消して、ポイント照明だけの雰囲気も楽しんでみてください。

掃除は面倒ではないですか?

掃除についても、必ず質問が出ます。
スタンド照明があるからと言って、特に掃除の回数を増やす必要はありません。
照明器具の掃除は、家具や他のものを拭き掃除するときに、一緒に拭くだけです。
または、家具の埃をハンディモップで取るときに、スタンド照明もついでにくるっと拭いてください。
自分はあまり掃除しないから、家具には多少、埃が乗っているわ、という方は、スタンドにもちょっと埃が乗っている(笑)、それだけの事です。

反対に、シーリングライトはお掃除するのが大変ですよね。
脚立に乗ってカバーを回して取り外し、拭いたり洗ったりして、また脚立に乗って取り付ける。
これはけっこう怖いですし、高齢になると更に危険です。

それに比べると、ペンダント照明やスタンドは、目の高さくらいの位置にあるので、掃除には脚立に乗る必要はありません。
いつでもサッと掃除ができるので、シーリングよりも手間がかかりません。


おしゃれな部屋を作るための照明のポイントまとめ

インテリアをおしゃれにする一室多灯照明について、解説しました。
一室多灯照明は、雰囲気のあるインテリアがつくれます。
ぜひ、トライしてみてください。

照明によって、単に見た目のおしゃれさ、雰囲気がよくなるだけではありません。
照明が、視覚や脳の情報処理に与える影響、内分泌系に与える影響は大きいですし、生活リズムにも大いに関係があります。

照明を変えることで、いまより暮らしが豊かになります。
この記事を参考にしていただければ幸いです。

PROFILE

水田 恵子
水田 恵子インテリアコーディネーター事務所「Office SPIRAL」主宰
大阪市を中心にインテリアコーディネーターとして活動。2014年に個人事業Office SPIRAL、2022年に株式会社S.O.Pを設立。
専門分野:空間デザイン心理学®を使った、一般住宅・宿泊施設・サロン等のインテリアコーディネート

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